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品を300年後の現代の人が再現をするわけです。そうすると、その曲をつくったのはバッハなんですが、楽譜というのはそれほど完壁に音楽をあらわすことは出来ませんので、それを演奏する演奏者の解釈が入ります。演奏者は現代に生きているわけですから、つまり古い音楽というのがその演奏者の個性を通していつでも現代に生きている。これがクラシックでして、クラシックという思想が生まれてきたのも、大体この作曲家、演奏家が分かれて、それからしばらくたってからのころです。
それで、作曲家は初め演奏家、さっきも言ったように、同じ町の演奏家に頼んで演奏してもらったいたというようなことがあったと思いますが、素晴らしい作品が出来て、その評判を聞いて、例えばウィーンのべートーベンの作品をパリのだれかが弾きたいなというようなことが当然起きてくる。当時は交通機関も大変でしたので、楽譜の出版ということがそこに生まれてくるわけですね。印刷技術というのは相当古くから発達をしておりまして、楽譜の印刷もかなり古くからあったんですが、つまり出版社というのが有名な作曲家の作品をどんどん出版して出していくということが起きてくるわけです。
それから、それまでの演奏家というのは、楽譜はもちろん書きました。楽譜を書かないと、音というのは空気の中へ消えてしまいますので、自分でも記憶にとどめておかなきゃならないので、楽譜という記号を使ってそれを書きとどめたわけですが、それは自分で弾いたわけですよね。自分で弾いたわけだから、メモ程度に書いてあれば何でもできたわけです。
ところが、これを人に弾いてもらうということになると、ここのところを大きくしてくれとか、ここのところは小さくしてくれとか、ここはだんだん大きくしてほしいとか、いろんな要求が出てくる。そういうものを楽譜の中に全部書きあらわしていかなきゃならないので、そういう校訂というのをしなければならないということが生まれてきた。特にクラシックなんかの場合は、古い作曲家はそんなことをしないうちにみんな死んじゃったわけですから、楽譜というのは音の高さや長さが書いてあるだけで、あとのことは何も書いていない、それをあとの人主として演奏家が演奏用に弾けるように強弱をつけたり、いろんな枝葉をつけて出版をするということをしたので、校訂という仕事というのが1つそこに生まれてくる。
それに伴って、権利的な問題として版権の問題。出版社というのは、やっぱり人気作曲家をなるべくたくさん自分のところで抱えて契約して、曲を出したいというので、そこで権利を押さえるというようなことがあるわけですし、オペラなんかの場合は上演権なんて

 

 

 

 

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